採用面接で聞いてはいけない質問、実は法的リスクがある

採用面接で聞いてはいけないNG質問の例を示すアイキャッチ画像。採用・定着カテゴリーのタイトルを表示している。 採用・定着

前回は、組織コンセプトを欠いたまま制度変更を進めると従業員の反発を招きやすいという構造について整理しました。制度変更だけでなく、入社よりも前の段階、つまり採用面接にも、会社が悪気なく法的リスクを抱えてしまっている場面があります。今回は、採用面接で聞いてはいけない質問と、その背景にある法的根拠について整理します。

面接官の多くは「人柄を知りたいから」「アイスブレイクのつもりで」といった軽い気持ちで質問をしています。しかし、本籍地や家族構成、結婚・出産の予定といった質問は、応募者の適性や能力と関係のない事項を採用基準に持ち込むことになり、職業安定法や男女雇用機会均等法の趣旨に反するおそれがあります。

なぜ「悪気のない質問」が法的リスクになるのか

採用面接でのNG質問が問題になりやすいのは、面接官に差別の意図がない場合でも、結果として応募者の適性・能力とは無関係な事項によって選考結果が左右されたと評価されうるためです。本人に直接的な不利益が生じていなくても、収集した情報の内容や聞き方そのものが問題視されることがあります。

特に新卒採用・中途採用を問わず、複数の面接官が同じ会社で面接を行う場合、一部の面接官が悪気なく踏み込んだ質問をしているケースは少なくありません。会社としての方針が共有されていないと、面接官個人の判断に委ねられてしまいます。

厚生労働省が示す「採用選考の自由」と「制限される質問」

会社には採用の自由がありますが、無制限ではありません。厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、本人の適性・能力に関係のない事項を応募用紙に記入させたり、面接で質問したりしないよう周知しています。具体的には、本籍地・出生地、家族の職業・続柄・健康状態・資産、生活環境、思想・信条、支持政党、宗教、労働組合への加入状況などが、就職差別につながるおそれがある事項として挙げられています。

また、職業安定法第5条の4では、業務の目的の範囲内でのみ個人情報を収集することが求められており、選考に必要のない情報まで収集することは望ましくないとされています。男女雇用機会均等法との関係では、結婚・妊娠・出産の予定の有無を女性にのみ確認するなど、性別によって異なる質問をすることは、性別を理由とする差別的な取扱いに該当するおそれがあります。

具体的に避けるべき質問の分類

実務でよく問題になる質問を分類すると、おおむね次のようなグループに整理できます。

  • 本籍地・出生地、生まれた場所や育った環境に関する質問
  • 家族の職業・続柄・健康状態・資産状況に関する質問
  • 思想・信条、支持政党、宗教、加入している労働組合に関する質問
  • 結婚の有無、結婚・出産・育児の予定(特に女性応募者にのみ確認するケース)
  • 持病・既往歴など、業務遂行に直接関係しない健康情報の詳細な聞き取り

これらは「絶対に話題にしてはいけない」というより、選考の判断材料として扱うこと自体が問題になりやすい事項です。応募者が自発的に話した場合の扱いも含め、会社として方針を決めておく必要があります。

面接官が「定番だと思っている質問」ほど危ない

NG質問が起きやすいのは、悪意ある質問ではなく、面接官が長年の習慣で「定番」だと思い込んでいる質問です。「ご家族は何をされていますか」「将来的にお子さんは考えていますか」といった質問は、世間話の延長として使われがちですが、いずれも前述の分類に含まれます。

特に現場のマネージャーが面接官を務める場合、人事が用意した質問項目から外れて、その場の流れで踏み込んだ質問をしてしまうことがあります。面接官向けの研修やガイドラインがないまま面接を現場に委ねている会社では、このリスクが高まります。

会社側にとっての面接NG質問のリスク

採用面接でのNG質問を放置すると、会社側には次のようなリスクが生じます。

  • 応募者から差別的な質問だと指摘され、SNSや口コミサイトで採用活動そのものの評判が悪化する
  • 不採用とした応募者から、選考基準の妥当性について説明を求められた際に、適切に回答できない
  • 行政(都道府県労働局やハローワーク)への相談・指導の対象となる可能性がある
  • 面接官ごとに質問内容がばらつくことで、選考基準の公平性そのものが揺らぐ

特に近年は、就職活動中の学生や転職者が面接内容をSNSで共有することも増えており、一度の面接でのやり取りが会社全体の採用ブランドに影響しうる点には注意が必要です。

面接前に確認しておきたいポイント

面接官にNG質問をさせないためには、少なくとも次の点を確認しておくとよいです。

  • 面接で確認する質問項目を会社として明文化し、面接官の自己判断に委ねていないか
  • 本籍地・家族構成・結婚・出産予定・思想信条・宗教など、選考に不要な事項を質問項目から除外しているか
  • 現場のマネージャーを面接官にする際、NG質問に関する説明や研修を行っているか
  • 応募者が自発的に話した場合の記録・取り扱い方針を決めているか
  • 複数の面接官が関わる選考プロセスで、質問内容に一貫性を持たせる仕組みがあるか

従業員・人事それぞれができること

従業員側から考えられるアクション

  • 面接官を担当する前に、会社が定めたNG質問のリストを必ず確認し、世間話のつもりでも踏み込んだ質問を避ける
  • 応募者から家族構成や結婚・出産予定などを自発的に話された場合、それを評価に反映させず記録の扱いを人事に確認する

人事側から考えられること

  • 面接で確認してよい質問項目を明文化し、面接官の自己判断に委ねない仕組みを作る
  • 現場マネージャーが面接官を務める前に、NG質問に関する研修を必須化する

さいごに

採用面接でのNG質問は、悪意の有無にかかわらず、応募者の適性・能力と関係のない事項を選考に持ち込んでしまうことそのものが問題です。面接官個人の経験や習慣に委ねるのではなく、会社として質問項目を明文化し、共有しておくことが、採用活動そのものを守ることにつながります。

次回は、データの取り扱いというつながりで、ピープルアナリティクスを導入する前に決めておくべきことを整理します。


この記事は実務上の一般的な傾向や論点を整理したものであり、個別の法的判断ではありません。具体的な対応については社会保険労務士・弁護士等の専門家にご確認ください。

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